暗い廊下と鳩時計


軽い眩暈。
視界も少しぼやけている。
日付が変わったと同時に、貴方は居もしない何かに揺り起こされるように目を覚ましてしまった。
トイレに行こうと布団を出た貴方は長めの階段を一段ずつ降りる。
ようやく暗い廊下に差し掛かった時、普段とは違う空間のような異様な気配を感じた。
さらに電球も切れ掛かっているのか、電気を付けても妙に暗い箇所が多い。
ぬるい冷や汗に反応して時間の流れは意地悪く鈍り
床の軋む音や得体の知れない低音らが心拍数を上げる。
時計の音が嫌に響く廊下では、木の木目がヒトの顔に見えてしまった。
話の通じない無数の顔。
口を呆けたように開けているくせに、その何処を見ているかわからない目だけは確かに害意を持ってるのがわかる。
ふと、貴方は時計の音がすること自体に疑問を持つ。
廊下に掛けてある鳩時計の電池はとっくの昔に切れていたはず。





恐怖にたじろいでしまった貴方の意識は唐突に薄れ、気が付くとまた布団の中に居た。
そのまましばらく呆気に取られていたが、今何時なのかが気になる。
枕もとに置いてあるデジタル時計に手を伸ばし、画面点灯ボタンを押した。
緑色の光が大きく「00:00」という黒い数字を浮かび上がらせる。
驚いたことに秒を表すカウントは微動だにすらしていなかった。
恐怖で意識が薄れ、布団の中に戻されては時間を確認する。
この事象をもう一度繰り返した貴方は自分が現在おかれている状況を覚った。
何者かによって、固定された時間の中に閉じ込められてしまったらしい。
動作に怯えを見せてしまった場合にやり直しと言わんばかりに布団の中に戻されることもわかった。
今度こそはと頭の中で無理やりに愉快な音楽を流しながら廊下を行く。
トイレまで辿り着くことが出来た。
尿意で軽い痺れを持っていた膀胱を癒した後、貴方は再び廊下に出る。
さっきよりも明らかに、時計の針の音が大きくなっている。
怖いながらも気になった貴方は鳩時計の掛けてある場所に半ば導かれるように足を進めた。
鳩時計がなくなっている。
では、時計の針の音は一体何処から発されているのか。
そのとき、物置部屋の戸が勝手に動き出した。
ゆっくりと開かれ、中から何か出てくるような気配がある。
心の中で悲鳴を上げた。
何せ、この家には自分以外住んではいないのだから。
いち早く寝室に戻ろうと思うものの、下手に音を立てて物置部屋にいる”何か”を刺激してしまうのも恐ろしく思えた。
なるべく音を立てないようにすり足で階段を上がろうとしたとき、全身がゆっくりと痺れていく感覚に襲われ
貴方の体は床に崩れ落ちた。
その音に反応してすかさず、形容したくも無いうめき声を上げながら”何か”が物置部屋から飛び出してきた。
それは今、もう貴方の真後ろに






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