水槽の廃墟

薄暗い部屋の一部と化して寝ても覚めても似た光景を繰り返す毎日では孤独感こそ唯一の友人です。
否応なく連続する安いループ映像の静けさ。
まるで水草も魚も居なくなった水槽のよう。
次第に現実感は希薄になり、もはや肉体も生物としての基本的な欲求を忘れかけています。
他人との接触がほとんど無いせいで、身体の外側からかもたらされる情報、感情的な刺激がなく
それに伴い、日常的な会話に於いて重要な脳内で思考を纏めたり発したりする能力が眠りについていっている実感があります。
私は水槽の廃墟に住んでいます。
自己の精神の水に満たされた、昼夜問わず薄暗い時間が流れ続ける水槽です。
そこでは些細な事柄でさえ宇宙的な変化のように感じられます。
自分の体の小さな傷口から血液が流れ出るのでさえ新しい恒星の誕生のように大きなことにです。
外界からの刺激が無い代わりに、自己の内面に目は向きます。
昨日は水槽の中で聞いたこともない音が響いていました。明るい音でした。
大抵は諦めきったように明るい音や悲しい音の二種類です。
中には現実世界の楽器では鳴らせないような音もあるので、いつか自分自身で楽器を作ってみたいと思うこともあります。
とにかく体が衰弱していっています。
簡単な動作でも震えを伴うようになりました。
一方で精神の方は大きく広がっていきます。
闇に隠されているだけで本当は色に溢れた深海で静かに消えていく運命は美しいですか?
おやすみ。

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