死体と蛙とエアーガン

川辺を歩いていると近くに居た人が誰かに撃たれた。
顔は見えなかったが、撃たれたのはスーツ姿の男性らしいことがわかった。
腹部辺りから鮮明な赤い血の水たまりがじんわりと広がって行く。
その脇に佇む青々と茂った林の色と対照的に映って、妙に美術的な光景に思えた。
「しかし、一体誰から撃たれたのだろうか?」と不思議だった。
直後、遠くから警察の気配が迫ってくるのを感覚で覚った。
何か勘違いされたくなかった俺は、少し離れた場所にある
川辺の内でも最もカエルの多い一帯まで一目散に走り抜けた。
本当に地面を覆いつくすほどの小さなカエルだからけで
時たまその跳ねたやつが頬にまでぶつかってきたりした。
嫌に冷たく柔らかい感触が頬に残る。
それはさておき、今の大事は警察の追手が来ないかで
手にはおもちゃとはいえ物騒に見えるエアガンを握りしめていたことも危機感の一因だった。
おもむろにポケットに手を突っ込んでみると千円札が入っていた。
追手のような気配もなく、一先ずは大丈夫そうで安心した俺は、
数メートル先に佇んでいた駄菓子屋が目に留まった。とても懐かしい感じがする。
朽ち木のスライド扉に手をかけて開いた。
音に気が付いてくれたのか、奥から自分の母親と同じくらいの歳に見える女性店主が出てきた。
俺の顔を見るとその店主は露骨に目を丸くさせて、何か並みならない感情から微かに震えているのもわかった。
そうした少しの沈黙の後、店主の方から「いらっしゃい」と声をかけてきた。
俺は少々圧倒されたので、かしこまって言った。
「突然失礼します。駄菓子を買わせて頂きたいのですが…」
一瞬、追い返されたりするのかと思ったが
、店主の反応は予想していた以上に歓迎してくれる風で
「良ければご飯も食べていきませんか?」と切り出された。
俺はしばらく躊躇した後、自分の腹が減っていたことにも気が付いて
「あの…お言葉に甘えさせて頂きます」と小さな声で言った。
靴を脱いで上がり込むと、駄菓子屋の店内は外観から察していた以上に広く
ショッピングモールのフードコートの様な施設まであり
その中の店員の手つきや捏ねている小麦粉の塊などからうどん屋らしいと思われる店では
島田紳助という元芸能者と同じ顔の店員が一人で切り盛りしていた。
見た目にはうどん屋らしいのに、メニュー表にあったのは僅か二つの御品書きで
一つは海鮮丼ぶりのようなもの、もう一つはたれ染み込ませて焼いたご飯の下に
同じく焼いた鯖辺りの魚を敷いたものだった。
寿司一貫程のサイズのものが三つで値段が350円もした。
少し高すぎると思った。
ちょうどその時ご飯の準備が出来たということで、駄菓子屋の店主が俺を呼び戻しにやってきた。

昔ながらの畳の部屋とその上に置かれた円形の食卓の前に座って
ご飯やみそ汁などを戴いた。店主は俺と向かい合う形で座り
自分は何も食べずにただ俺の姿を眺めていた。
俺は然程気にもせず箸を進めていた。
ある時、店主は口を開いて、実は俺の顔が以前亡くした店主の娘にそっくりなのだと伝えられた。
俺はなんだか誇らしいような恐れ多いような感覚になった。
それを切っ掛けに、店主は沢山話をしてくれた。
数年前に国がインターネット文化を廃して以降
国民の語彙力が急上昇した(実際の口頭では"アカウント制廃止以降~"という特殊な言い回しで語られた)とか。
この駄菓子屋店内のガシャポンコーナーはかつて地域屈指の品ぞろえを誇ったが
娘を亡くして以来、気力が無くてすっかり放置しているという内容だった。
部屋の隅に赤、黄、青色などのカラフルな空カプセルが
無数に積み上がっているのはそういうことなのかと納得した。

兎に角すっかり駄菓子屋の情緒や
この場所に染み入っているであろう様々な人の想いに意識を覆いつくされていて
先ほどまで全霊で危惧していた警察から濡れ衣着せられる危険性などはとうに消えていた。
外から何か喧噪やパトカーの音が聞こえることもない。
とりあえずは大丈夫だろうと、俺は安堵した。

回想の十番


1.
高層ビルが海底に聳える時代 人間の理性の亡骸
見渡す限りのサンゴ礁 古い神様の慈愛の彩り

1.
僕は金縛りに陥るとサナギなる。手足が言うことを聞かずに声を上げることさえ出来ない。そうして身悶えしている内に、胸の辺りが小さく割れきて、透明な命の羽が姿を覗かせる。でもそれが柔らかすぎるのが心配になってきて、途中で止めて引き戻すから、僕はいつまでも蝶に成れずにいる。

2.
「こんにちは、仲間外れのネズミさん。罠は必ず甘い香りを放つから、あえて苦い香りの方を辿ってゆくと良いよ。ああ、それから言い忘れていたけど、君の仲間達はもうとっくに全滅したらしいよ。お気の毒さまだね。お道理さまの運命さまさまだね」

3.
我が子へ垣間見るその強烈に醜さは、つまり自身の姿見。
子供は貴方そっくりに形を成して、過去の貴方を回想させる、一番可愛い天使の試練でありました。
そして世界は繰り返されて、愛はせめてもの正気の器でありました。

5.
睡眠で焚いた真透明な炎で炙る四角いティーバッグ。薫り立つ複雑な記憶の色模様は、過去から成って尚且つ常に新しい。山の麓で真っ赤な水溜まりにキスをする少年。その髪は波の如くうねり、日光を受けて黄ばんでいる。掛けカバンから覗かせる細長い
鳥の脚が確かに可愛い。
…あれは死んでいるのだろうか?

8.
発光する爪の先。髪の毛だけは機械でなかった。
電子端末で照射した白いクッキーを噛む0カロリーの夜食。
立ち並ぶ街灯と、それの届かない影の中間を懐かしい人間時代の残像。
空の明るさを自由に変えられる。海と意思疎通が出来る。

13.
目を閉じても、耳を塞いでも、口を噤んでも
そんなことはお構いなしに世界は動き続けた。

21.
自分の腕が視界に入る度に、目がチカチカして不愉快でした。
病的なまでに白い肌が、日光を拒んで反射させていたのです。

34.
鉄橋から見下ろす海面は、跳ねる魚や波打つ変化で退屈とは無縁です。何処から来たかも知れないゴミが、旅人の心で浮いてもいます。今この海の黒さの中に転落すれば助からないだろうという不安感と、海面と鉄塊に二度冷やされた風の涼しさが私の命の底まで届いて、その清涼感には泣いてしまいそうです。

55.
午前9時9分。交差点に影が掛かる。劇場の様に世界が暗転した。通行人のざわめき。続けざまに叫び声。太陽の代わりに現れた、普段の10倍はある大きな月の姿。強烈な清涼剤の香り。月は急激に青ざめてゆき、遂には地球そっくりの姿に成る。地響きが聞こえる。迫る潮騒。
地球は2つも要らないらしい。



<完>

音楽集

改造花アザミ_切り抜き3_convert_20170925142938
サウンドクラウドで公開中の自作音楽たちです。
曲にまつわる背景も少し書いているので
もし良ければご覧下さい。

本編は追記にあります。

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○回目乃日回目乃○

青い光を顔に受けて、目がチカチカした。昼間からカーテンを閉め切っているせいで、部屋には四角い形の一つの暗闇が出来上がっている。これが映画であれば、暗闇に浮かぶ病弱な顔が、幽霊染みた演出で映し出されるシーンだろうと思った。休日の昼間というと田舎の場合は死んだように静かで、この静寂の発生源を辿った先には猫の死体くらいならあるかも知れない。本当に、自分の押すマウスのクリック音くらいしか音が聞えなくて、落ち着いたり逆に不安になったりする。ほとんど習慣的にお気に入りページを押して巡回してゆく、そのほとんどは目の端へ流してゆくが「座って過ごす時間の長さは死亡率に比例する」という内容の記事が目で思わず目が留まった。自らの未来に直接関わっていそうなだけに、放っておけなかったのだと思う。

(ですので、とにかく多数に見向かれる記事を作成したいという方は、
無理やりにでも"自分と関係している"というインパクトを与えてあげれば良いと思います。)

本当はこういう風にだらしなく脳の入り口を開いて情報の海に浸る行為は、不健康かつ無思考な自滅の一路だという結論を出して自粛をしていた。けれど、社会に弾き出されてからというものの、僕の世界は途端に静かになって、それは諸刃の剣でもあるのだけど、まさに僕の顔の方へとじりじりと迫り寄っていた。脳の不活性化が、皮肉にもそれは年中無休で僕の脳味噌を侵し続けているように思えてならなくなった。外界からの刺激が少なく、若い内から脳が老朽化してしまうかも知れない。それは本当に怖い。けれど実際にそうなってしまって御終いな自分を想像すると可笑しい。

瞼を光が撫でる感覚に気付いて、はっと目を開いた。どうやら僕は何年分にも及ぶくらいの長い夢を見ていたらしい。今は何時だろう? 早く学校に行く支度をしないと。PCモニターの右下に映し出されていた時刻は12:00だった。昼間まで寝過ごしていたのだろうか?時刻のすぐ下には日付を示す数列が並んでいる。「2017年」と表示されていたので、ちょっと困惑した。それから、いつも壁に掛けている筈の学生服の姿が無い。黒いハンガーだけが裸でぶら下っているし、微かに埃も帯びている。唯一、母親に渡されたカレンダーだけが、僕の"正しい日付"のままで凍り付いていた。それを見た瞬間に僕は全てを悟って、風船の御終いの様に、溜息そっくりに笑うくらいしか出来なかった。でも、これで予習も課題もしなくて良いのだし、地獄の底のようなあの学校にも行かなくて良いのだと安心した。同時に何故か、様々な感情の織り交じった、形容のし難い紫の色の塊が、胸の深奥から止めどなく込み上げてきた。僕は堪らず両腕を机に投げ出して、その隙間に出来た闇の中へと頭を浸した。嗚咽が止まらないが、涙はとっくに枯れてくれているらしい。半開きの窓の奥からは、ツクツクボウシの鳴き声が聞こえた。ちょうどアブラゼミとクマゼミが死に絶えた時期から出てくるのだから、実に小賢しいヤツだと思った。窓の近くに置いてある、干からびて枯草と石だけになってしまった水槽が「スー、スー」と子供の寝息の幻聴を始める。無意識に腕をさすった。高速再生のクラシックが鳴り響く。時折混じるノイズで息継ぎをしないと意識が持たない。頭が割れそうに痛い。三角形の見えない蝶々が埃と一緒に舞う。遠い時代に死を残してきたらしい…

ただいま、僕の新しい日常。

精神四季

神経中で回転するバレリーナが四肢四散して方角を定め、たちまち視野が昇る。透明になって隠れている昼の星々に聞けば、ここは古今名高いアルプスの山峰らしい。「オッホ」と呼ばれる全身真っ赤の品種の羊の首が、高速で伸び縮みして柵の横縞の極小シアターの段々を賑わす。風見鶏に備わるフルートが実在音階の18音上を明滅したことで、太った夫人はご機嫌なハバネラで地を震わせた。汗を拭った旦那は手早くオッホを斬首して、精霊に祈る身振りの後に、その首を黄色いプラスチック容器へと投げ込んだ。旦那は手に付いた血糊を指先でほぐして眺めてはウン、ウンと満足げに頷いている。晴天下に曝されるその真赤さの見事なまでのものものしさ。この地方の羊はその血の地獄のように立派に極まる真紅から、食用と言うよりは染料の役目を果たすらしい。中でもそのオッホは子羊時代から上等と見込まれていた為、まさに本日は栄えある命のお披露目の日だった。そしてこんな快晴は洗濯日和で、洗濯ばさみごときの尾っぽの部分が次第にめでたく赤らみ、膨張し、やがて日光の中から現れ来る巨大な図体の鯛の幻覚、これもまた忌々しいまでにめでたい紅白の発色を全身のウロコに携えて、実に煌びやか。焦点の合えばたちまち駆け寄って"エビ"に噛み付く、そうして鳴る大きな乾いた破裂音。鯛もバラバラに飛び散るのである。その破裂音が山々の間を行き交って朝寝坊な生物の鼓膜を揺らし、音の上昇した分は見えるともなくお日様に恵比寿の微笑みを触発する。一日の開始を祝う祝砲であった。



彩り豊かな裁縫の街の山を越えた先には、世にも珍しい真っ青な真珠の名産地として知られる海岸がある。既に無人も納得の、通り魔クラスさえ真っ青の3年前の大殺戮劇である。明星の蒼さを誇るその地の空色を受けて、真珠までもが真っ青に染まっているのではないかと神秘的な噂が棚引くも、その瞳を吸い込む様な絶世の青みは、遂に忌みの根源として市民の思想奥深くに定着し、物乞いや密猟者さえも近づこうとはしなくなった。ある気違いも同然の物好きが持ち帰った、深夜の海岸の光景に依ると、そのかず数百にも及ぶ球形の霊魂が鯨の悲鳴を発てて、海と空の間を何度も登ったり落ちたりを繰り返していたという。



駅のホームの裏側にある、陽当たりの悪い林に来ている。ここを吹く風は涼しいが、風の中には微かに腐臭らしいものが混じり、たまに烏も啼いている。清涼飲料水の色あせたパッケージを見つけた。しかも期間限定らしい。お菓子や食品のビニール包装は山ほど捨ててあって、こういう場合にカラフルであることは余計に汚らしく見えるから、敢えてパッケージを地味な色で統一するという案を思い浮かべたが、目立つ色にしておくことでゴミ拾いをしやすくなっている可能性も浮かんできて、ぶつかり合って相討ちを果たした。人形の頭が落ちていて、しかもわざとらしく目玉を刳りぬかれていた。悪戯か、またはホンモノか。スマートフォンが二度振動した気がしたが、画面には何の通知も出ていなかった。錯覚か不具合だったらしい。こういう場所では決まって木々が不機嫌で、苦しみ悶える姿でうねっている。木の裏側に縄が落ちていた。先端には上手に結われた輪っかが一つ。カメラを起動するとスマホがフリーズして動かなくなった。こっちはホンモノかも知れない。それはさて置いて、木漏れ日が描く小さなの円の中を、丁度良く咲く一厘の白い花あった。
この世界も捨てたものじゃないと思うが、胸を張って次代に見せられるような代物でもないと思う。
仮に世界を終わらせようとする人が居るとしたら、幾らか同情の気持ちを持ってしまうだろう。



現在、僕の眼前には見上げる程の金色の門がある。それは豪華絢爛極まった意匠が足元から天辺までを隙間無く埋め尽くしていて、しかも不思議なことに、城や館の入り口として備わっているのではなく、明らかにひとつがいの門だけの姿で空間に立ちはだかっているのである。神聖でかつ恐ろしいとでも言うべき、これまでに見たことの無いような雰囲気を放っているが、強いて言い表せばこの感じは仏教的かも知れない。例えば自己の存在や消滅など、そんな極めて深刻な異変が起きる予感に満ちていたので、これが夢ならばなんとか早めに覚めないものかと焦りを感じていた。周囲を見渡すと、辺り一面は目出度いまでに新緑色の晴れやかな草原であった。こういう場所なら犬の散歩をしている人や家族連れの後ろ姿の1つや2つはありそうに思えたが、そんな気配が少しも無く、どこまで視線を伸ばしたところでひたすら無人の空間を、見渡す限りに生い茂った草が潮騒そっくりに、大声でざわめいているくらいだった。どう仕様も無くなって全身に力を込めて目を瞑り、夢なら早く覚めるようにと念じてみたが、無情にも変化は無く、在りがちな方法で頬をつねってみてもただ痛いだけだった。そうこうしている内にふと、空気中に潮の匂いが混じっていることに気が付いた。妙なことだった。海などは何処にも見当たらないのに。しかし、それが門の隙間から漂ってきていることに気が付くと、今度は何故か懐かしいという感情が腹の奥から込み上げてきた。更に恐怖と、逃げ出したいような感情までが、見えない波の様に次々と押し寄せてきて忙しい。そうして最終的には諦めのような心で静まっていた。
 "満を持した"と言わんばかりに、門がゆっくりと開き始める。
続けて、扉の中には何か強大な圧が渦巻いていることを、見えるともなく肌身で感じた。
「あ、これはあの感覚。」
すぐ目の前を高速の電車が通過する時の、あの感覚にそっくりだ。
「ああ、結局、僕はまた生まれないといけないのか…」



<終>

囀ろうとも浮かばれず

普通の友達が居ない僕にとっては放課後の木々の妖気だけが学校で唯一親しい存在でした。ざらついたサイケデリックな体表は掌を乗せるとたちまち熱を吸い、吐く息は冷気で空間を満たし、上空へ伸びた枝葉の天井はそれもまた冷たくベールとして僕を覆い隠してくれているようでした。とても静かで平和な時間が流れます。不意に耳を突いた歓声は、運動場の方角からでした。目を向けるとそこには僕が居ない世界がのびのびと広がっていて、生徒が活発に走り回ったり叫び声を上げたり、たまにちょっと悪態を付いたりしていて、狂気とも言えるほどの盛り上がりを見せています。やっぱり僕が居ない方が皆は楽しく居られるのだと安心して溜息が漏れました。僕は僕でこっちの世界で上手くやるから、と思って木々を見渡すと、彼らも彼らで意地悪く人面が浮き出させたり、裏側で嫌に残酷な光景を隠し持っていたりしました。結局何とも相容れなかったので僕はこの世界で独りぼっちなのだと確信しました。そうすると不思議なことに心の底から笑みが湧いて、僕は幸せになりました。



『囀ろうとも浮かばれず』

赤い水たまりがあった。
それは路上で倒れた人の頭部から流れ出ているのだと気付いた。
タイヤ屋の前には看板がある。
その看板はいつも赤い塗装が斑状に剥げていたのだけど、今日だけは不自然に赤黒かったので大方察しはついた。
ここでは人間よりも看板が偉い。
それはそうと気温が40度近く、このまま行けば自分の両方の眼孔から溶けた目玉がジュクジュクと溢れ出してくるのではないかと心配になる程であった。意味もなく包帯を巻いていた両手がシューシュー音を立てている。急いで曝け出すと爪が溶けていて、そこから血液が蒸発していた。神様に向かって両手を掲げると、実に10本もの赤い煙が快晴の青空の下で筋を描いて昇った。遠くから救急車のサイレンが聞こえた。オシャレなケーキのように細長いそれは、何故か車道ではなく歩道を突き進んでくる。不意に体に大きな衝撃が走り、視界がグルグルと回転した。もう一度体に衝撃が走った時には眼前の景色は静止していて、先ほど倒れて出血していた男性の元へ白い作業着を着た男二人が近づいていた。一人が男性の体を起こして支えると、もう一人は背中のタンクから伸びたチューブを無理やり男性の口へと差し込んだ。コイントスのようなピンッという小洒落た音と共に男性の白い歯が飛んできた。僕は痙攣して上手く動かない腕でなんとかそれを拾い、握りしめる。男性は激しく咳き込みながらもなんとか自力で立ち上がったらしい。白い作業着の男たちが再び細長い救急車の中に戻り、またしても僕の方を目掛けて突進してきた。僕は力を振り絞って体を転がす。どうにか轢かれる寸前のところで避け切ることが出来た。サイレンの音が遠ざかるのが背中で聞こえる。救急車はそのまま元来た道を引き返して行ったらしい。先ほどからやけに服が湿っぽいと思ったら、地面には自分の血液の赤い水たまりが出来ていた。震える足腰ではなくむしろ頭部に力を入れて辛うじて立ち上がる。復活した男性は相変わらずその場に立っていて、呆けた顔をして僕を見ていた。しかし僕と目が合うとハッとしたように素知らぬ顔をして歩き始めた。自分の歯が吹き飛んだことに気が付いていなかったのは幸いだ。僕は右の拳を握りしめ、手のひらを突く小さな感触を再度確かめる。視界もさっきよりは少しだけ霞が取れていて、まだどうにか持ちこたえられそうだ。ガソリンスタンドで給血して貰う為には、まずはこの歯を換金しなければいけない。
 肉体換金所は相変わらずならず者の行列で、並んでいる間に残りの血液が尽きてしまいそうな程だった。そんな時、換金所の裏側の方から白い誰かの手だけが伸びてきて、おいでおいでと手招きの形に動いた。僕は深い安堵から吐血してしまいそうになる。おぼつかない足取りでそちらへ向かうと、知り合いのヒリキリという娘が立っていて、片手には紙幣を握り、もう片方は手ぶらでこちらに差し出している。一瞬、人気の上級作業員の真似でもして握手をしてからかってみようかと思ったけど、すぐに体の痛みでそれどころじゃないことを思い出して留まった。由来も知り得ないだろう歯を渡すとヒリキリはうっすら微笑んだ。一切事情を詮索せず、どことなく同情するような慈愛まで漂わせてくるのは流石あの婆さんの跡継ぎだけはあるな思った。その顔の片方の眼窩が空洞になっていることに気付くまでの間は、僕も普段よりは心が穏やかだったはず。「そしたら、じゃあね。気を付けなよ」と別れの挨拶を囁かれた後は、僕はいよいよ足を震わせながらも片腕を挙げて余裕を見せた。普段はこうする時は決まって彼女がフッとか声を出して微笑むだけど、今日はそれが聞こえなかった。
 時間切れになる前になんとか給血を済ませられた。今日のようにあまりに大量な日は喉が微かに痛くて好かない。日は沈みかけていたがなんとなく先ほどのヒリキリの様子が気になって、せめて二、三言くらいは労いの言を交わしに行こうと思った。ちょうどその時、夕暮れ時になると生えてくる電子看板が現れて、更に人々が不自然にざわついた。通常それには翌日の天候や温度が表示されるもので、運が良い時は翌週全体の大まかな予想が表示される。騒ぎの原因はモニターに映し出された数字を見てすぐにわかった。見間違えでなければ明日の気温が60度と表示されている。一時経過した後、人々はそれぞれ腕を組んで深く考え込んだり、諦めたようにまた歩き出したりし始めた。ショックで半狂乱になってしまった女性があろうことか電子看板のモニターを拳で叩いた。泣きながら、表示が壊れているというような訴えをしている。すぐに近くの上級作業員が駆け寄って来て女性を引きはがそうとしたらしいが、次の瞬間にはもう女性の首がおもちゃの様に凄まじく回転しながら天高くを舞っていた。素早く頭を振ってこびりついた血を吹き飛ばすと、変形していた電子看板はまた元の形に戻る。上級作業員は呆れた様子で残った女性の体を抱きかかえ、付近に聳えるビルの中へ帰って行った。
「まあ、どのみち俺たちも肉質工場に出戻りなんだろう」
一連の悲劇を見終えた人々は、明日わが身に降りかかるであろう次の悲劇へと想いを馳せながらまた歩み始める。
 気付けば日は沈み切っていて吐く息が白くなっている。ヒリキリのことを心配する余裕もだいぶ薄れてしまっていた。今では何のために自分は生きているのだろう、という根本的な疑問が頭を占めてる。
「とっくに死んでいる俺を呼び覚ますものがあるとすれば、それはせいぜい自殺頭痛くらいだ」
昔読んだ漫画本の主人公が発していた良く分からない台詞だ。
特に好きな台詞でもないのに、何故だか急にそんなものが頭の奥から浮かびあがってきて、印象的に揺らめいていた。



スー スー と寝息を立てる。その可愛い一人の生物は。或いは過去から連なる無数の個人の集合体。
星の灰塵が成した新しい姿。またいずれ灰塵と化す悲劇の宿命の持ち主。薄い瞼の下にはピカピカの眼球が二つ守られていて、これから世界を視るだろう。柔らかで繊細な肌。サラサラ流れる真っ赤な血液。未来そのもの。
あなたは何処からやってきたの? 泣きながらやってきたのはこっちの世界が怖くて堪らないかったから?
それとも、向こう側が怖くて堪らないからこっちに逃げてきたの?



世界を更新するようにザアザアと、断続的な大雨が二日間に渡って降った。真昼間なのに街灯も起きて、大小差のあるスクリーン達にはそれぞれ女性アナウンサーの同じ顔が映し出される。幾つもの同じ顔が完全に同期して動く奇怪な光景を前にしても、カラフルな雨傘たちはお得意の足早で、無関心を美徳と忘れない。鳥たちは姿を消して鳴き声のみの雨を憂うノイズと成り、一方水たまりはぴしゃんぴしゃんと惜しみない爆撃を浴びてなおも喜び続ける異常者であった。雨の中では雑草の青さは妙に鮮烈であり、花の白い色は禁忌を思わせる程の白さが面白い。結局は雨が止んでからもその街の空は薄暗いままで、よくよく考えてみると快晴という天気の種類は数年前に消滅してしまっていたのだった。それはそうと、甲斐ヶ屋神社へ続く道の道中にはざらついた石の階段があり、そこでカタツムリ達が雨の残り香を名残惜しそうに舐めている。そんな場所に居ると通行人に殻ごと踏みつぶされてペシャンコになってしまうぞという忠告も無用らしく、気づけば雨の匂い共々殻ごと消え去る妖精らしい。空気は確かに澄んでいる。



公園は妙にひと気がなく、目に見える物から見えない概念までも全ての形は円が真理なのだと説く幼児だけが居ました。
彼は私に画用紙と鉛筆を用意させ、そこへなるべく綺麗に一本の直線を描くように指示します。
直線は端から端まで届き、丁度画用紙を半分に分断しました。
その黒い直線を彼は"大きさ"を表すグラフだと言い、底が最小であり、天辺は最大であると説明しました。
例えば私たち人間であればちょうどその線の真ん中くらいに位置するそうです。
次に彼は一本の線の先端同士が繋がるように画用紙を丸めるように指示しました。
私が指示に従うと、彼は幼児にしては不気味な程慣れた手つきでセロハンテープを貼り付け、丸めた画用紙を固定してくれました。
そして丁度、線の示す最小と最大とが接合された部分へ指先から飛び出した血液で印を付け、ようやく神様の居場所を突き止めたのだと言って得意げに微笑んでいました。



向日葵が一斉に月の方を向いて、花びらを青白く濡らしている。
人々が寝静まった後もしばらくは昼間の残像が行き交うため、文句を言わない信号機は休まずにウインクを続ける。
ふと潮風が吹いて松林が鳴ると、一面の雲があらゆる幻獣を模して海の方角へと出発する。
知られることのない時間にこそ、幻想が実在しています。



静かな部屋 断続的スローモーション

陶器のカエルが一人掛けの赤いソファの上を飽きもせずに跳ね続けている。無表情で壁を眺め続けているだけの僕に向かって、カエルは「同じ物事を指す言葉でも国によって様々で面白いから、暇なら調べてみれば」と気の利いた提案をするも、僕の落ち着きのない意識はすでに白いテーブルの上の砂時計へと引っ越していて無効だった。



大男に襟を掴まれて深い森の奥へと引きずり込まれてゆく老人。元来た道を忘れない様に右目のカメラを使って一定間隔で風景写真を撮っている。「でも、日が暮れた頃には森は真っ黒になっていて昼間のような風景は見えないよ」と不安がる観客に向けて左目のライトでカチッとウインクを配る。



カーテンが膨らみ、部屋に賞味期限の新しい風を招き入れた。
窓から差す日はテーブルを照らし、上に置かれていた一粒のイチゴも照らされた。
イチゴは小刻みに震え始めた。
次の瞬間にはイチゴにびっしりと纏わり付いていた種が銃弾のようにはじけ飛び、種があった位置には代わりに細く小さな白いトゲのようなものが生えてきた。
何本ものトゲは見る間に伸びゆき、イチゴを本体にしてひょいと立ち上がり、そのままテーブル上をトコトコと歩き始めた。
トゲだと思っていたものは全て触手だったらしい。
これはイチゴに擬態した新種の生物なのか、或いはイチゴの中に何者かが住み着いているのだろうか。
そんなことを考えているとそれは突如進行方向を変えてこちらに向かって来たので咄嗟に近くにあったティッシュ箱叩いて吹き飛ばした。
壁に激突したそれは衝撃を察知して白い触手を全て引っ込めてしまったのか、床に落ちたそれは種さえ無くなってはいるものの至って平凡なイチゴの姿に戻っていた。
一度も読んでいないポスティング広告を使って恐る恐るイチゴを救い上げ、キッチンにあった二本の菜箸を使って分解を始める。
中身は微かに抉れたような跡があったものの、不思議なことにそこにあったのは特に異変の見られない普通のイチゴの中身だけであった。
すると先ほどまでの奇怪な光景はなんだったのか。
単に寝ぼけて幻覚でも見ていたのだろうか。
呆気にとられている私の視界に、無数の触手で水槽の底を這う珍妙なネオンテトラの姿が映った。



コンクリート塀から垂れ下がっている細長い鎖の先端には金色をした金属製の輪っかが付いていた。
電柱の影からでてきた二足歩行のキリギリスはトボトボとその前まで歩いてゆき、
頑張って自作したらしい木の枝のハシゴを立てておもむろに登り始める。
頂上に着いて金属の輪っかを両手で抱えたところで、電柱の上部のスピーカーからは「おー! 一気にグイッいけ!」などと楽しげな声援や手拍子が鳴り響いた。
キリギリスの体重によって鎖は塀の奥からジャラジャラと音を立てながら引きずり出てきたが、途中でガチッと音を立ててつっかえてしまった。
好奇心が僕の脚を勝手に動かし、気付けた時には塀の側に立っていた。
無理やり鎖を引っ張ってみると、頭蓋骨に響くような不快な擦れる音と共にそれは出てきた。
手のひらサイズの丸く平べったい物体だった。
鎖と同じ金色をしている。
周囲を一周する細く僅かな隙間から、それが開閉式の物体であることが想像出来た。
端の小さな窪みに爪を引っ掛けて蓋を開くと、僕は踊るように奇妙に歪んだ二本針の時計と対面することになり、一瞬、自分の年齢を忘れてしまった。
気付けばグレープ色に変色していたキリギリスの死体が輪から外れて頭からスローで地面に落ちたのは悲劇的な演出だったのだが、先ほどまで大声で捲し立てていた人々はもはやキリギリスからはすっかり興味を失っていて、事の最重要なピリオドであるその瞬間には気付いてさえいなかったらしく、それもまたキリギリスの新たな体色同様、救い用のない紫色の悲劇であった。
さて、キリギリスはどうして自殺したのだろうか。
「それは単に彼がキリギリスだったからだ」という浅はかな答えにはとっくに飽きてしまっている。



何処から連れてきたのかさえ忘れてしまった灰色の空気が壁に染みこんで抜けないこの部屋で
日常はマトリョーシカ人形のように同じ模様で連続し、尚且つ徐々に縮小していっているのがわかる。



オルゴールの中で飼われる陶器製の黒い鳥は飼い主が窓を閉め忘れた僅か2分の隙を見逃しはしなかった。的無きダーツのような勢いで世界に飛び出すと、路上を埋める無数のセミたちの死骸が見えた。痙攣する枝のような脚から察するに中にはまだ息のある者もいたようだが、鳥は一秒でも時間が惜しいと目の端だけで軽くあしらって故郷へと向かう。
太陽が地上を制する真夏日であった。
日光がぬらりと陶器製の体表を舐め、意識の遠のくような熱を帯びさせてくる。
当てはないし、そもそも自分に故郷があるのかどうかさえ自信はなかったが、鳥はどうしようもなく衝動に突き動かされ
黒い線に見える程素早く、ただただ空を飛び続けている。



自分の好きな色の紙切れ一掴みで作った万華鏡の中の宇宙を一人で気ままに漂っている時間に、電話のベルが邪悪なクトゥルフのように宇宙全体を覆いつくしたせいで、私は世界ごと消滅してしまいました。とっさに出た溜め息が唯一の遺言だなんて、あんまりです。

過去は未来の為に、未来は過去の為に。

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TVの真実に気づいた人間はTVで溢れたこの世界で常時吐き気を感じながら生きていかなければならない。
今隣の席に座った成人男性も脳天からだらんとピンク色のアンテナを剥き出している。

植物が土から芽を出す様子を逆再生にすると地上にいる植物が縮んで土の中に引っ込んでゆく映像になる。その映像を見た人は誰しも一目でそれが逆再生だとわかるだろう。では、休日の公園で風が木を吹き抜けている映像ではどうだろう。ただ単に逆側から風が吹いているだけのように見えて、逆再生だと気が付けないと思われる。

もしも時間が反対方向に流れ始めてしまった時、あなたはどうしますか?
皆さん至る所で重力に背いた出鱈目な踊りを見せつけてくれますが、それが怖くて面白くて。

巨大な境界線によって地域はAとBに二分されていて、AではAとB両方の情報を得られるのに対して、BではBの情報さえ得られないような貧困が標準であり、あまつさえBの住民は自らをAに住んでいるような錯覚をしてしまっている。そのような、全くもって不公平な世界を見ました。

天井は踊り壁は笑い誰もいない廊下からカスタネットが響き時計の針が動物のように回る。
そのような状態にありながら、彼らはより物質としての現実感を帯びていた。
あらゆる常識が破壊される一種の錯乱状態にある光景の中で、慣れに埋没して見えなくなっていた本質を探し出す行為。

男と女は全く別の生き物だという。
その全く別の2つから1つとして生まれてきた僕たちは太陽と月のハーフのような奇跡であるのだろうか。

人類、殊に一般市民は古代のある時期を境に生命体としての衰退を辿り続けている。私がそう言うと、グリアは珍しく口を開いた。
「内在的☆●*!^数は増えていっている。」
そのよく聞き取れなかったナントカ数は生物が生殖を重ねて世代を受け継いでゆく度に確実に加算されるもので、それでいて決して目には見えないものらしい。
「子達の為に自らの生涯を尽くす親は素晴らしいよ、そっちの方が自分自身の本体ということをしっかり弁えている。」

真っ赤な争い。真っ赤な血。冷えて青ざめた頃には"静"けさ。漢字のたった一文字にこのように物語が息づいているので、ズームアップした認識下では日本語の文章は眩暈がするような情報量。発狂を避ける為に脳はズームダウンして調整してくれる。洒落でknow everything…。

星+体内+季節=コンディション

空の闇から香水
心に染み入る憂鬱な香り

深海浴

そこにあるのは到底正気で受け入れきれる量ではない暗闇と
それから到底正気で受け入れきれるわけもない色彩の究極たちです。
頭上にも宇宙があって、足元の深くにも宇宙があって、その間に立つ人間の中にもまた宇宙があるのでした。

私は極めて狭い部屋で、単調な往復を見せる鉢の金魚のようにその現実を静かに感じているだけです。
でも、贅沢なものだとも思います。
たったの一滴で空をオーロラが躍るのですから。

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水槽の廃墟

薄暗い部屋の一部と化して寝ても覚めても似た光景を繰り返す毎日では孤独感こそ唯一の友人です。
否応なく連続する安いループ映像の静けさ。
まるで水草も魚も居なくなった水槽のよう。
次第に現実感は希薄になり、もはや肉体も生物としての基本的な欲求を忘れかけています。
他人との接触がほとんど無いせいで、身体の外側からかもたらされる情報、感情的な刺激がなく
それに伴い、日常的な会話に於いて重要な脳内で思考を纏めたり発したりする能力が眠りについていっている実感があります。
私は水槽の廃墟に住んでいます。
自己の精神の水に満たされた、昼夜問わず薄暗い時間が流れ続ける水槽です。
そこでは些細な事柄でさえ宇宙的な変化のように感じられます。
自分の体の小さな傷口から血液が流れ出るのでさえ新しい恒星の誕生のように大きなことにです。
外界からの刺激が無い代わりに、自己の内面に目は向きます。
昨日は水槽の中で聞いたこともない音が響いていました。明るい音でした。
大抵は諦めきったように明るい音や悲しい音の二種類です。
中には現実世界の楽器では鳴らせないような音もあるので、いつか自分自身で楽器を作ってみたいと思うこともあります。
とにかく体が衰弱していっています。
簡単な動作でも震えを伴うようになりました。
一方で精神の方は大きく広がっていきます。
闇に隠されているだけで本当は色に溢れた深海で静かに消えていく運命は美しいですか?
おやすみ。

森の中

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こんにちは。
今日はひとけのない森の中で一人で遊んでいました。
さまざまな形状の植物たちが入り乱れる様子はどこか狂気的で
気弱な私はすぐに怖くなって、元の狭い部屋に帰りたくなりました。
昼間だというのに夜のような静けさに満たされているのも怖さの一つです。
それでも好奇心と妙な心地よさに導かれてさらに奥へと足を進めていきました。


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枯葉の絨毯が敷かれた一帯がありました。
冬の名残でしょうね。
歩くとサカサカ音が鳴って面白く、録音して音楽にも使えそうです。
ここでは常時、誰かに見られているような気配をうっすらと感じてもいました。
もちろん周囲に人は居ません。
植物にも視線を持つ者がいるのかもしれませんね。


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最後は小さな湖のある一帯です。
ズームしたせいで少しぼやけてしまっています。
水面は常時静まり返っていて、街には無い時間が流れていました。
ここには結構長い時間留まっていて、湖の中に大きな生き物が潜んでいたり
何か怖いものが沈んでいたりする想像をしていました。


DSC03953.jpg

普段見かけない形の植物がいくつもあって
まるで日本ではない何処か遠い空間に迷い込んできたような感覚になれました。
いつかまた行きたいと思います。
カメラの使い方が下手なのでうまくピントが合っていない写真ばかりなのを惜しく思います。
いつかは写真ブログをされている方々みたいに綺麗な写真を投稿したいです。
心霊写真は撮れませんでした。

アンティークの静けさ

路地裏のショーケースの中には静かな人形が一体。
その光沢ある瞳には物憂げな青い雨が映っていました。
人形は自分が人間に変身して傘を差して歩く想像をしました。
傘は雨粒でリズムを奏で、長靴は路上に波紋を広げてチャプチャプ。
普段通行人が嫌がっているのが見える水溜りの存在さえも人形にはとても楽しいものに思えました。
漂ってくる紅茶の良い香りはオーナーの休憩時間であることを知らせます。
人形は特段愛に満ちた華やかな生活をしているわけでもないのですが
背中で微かに感じるオーナーの温かな気配、それからゆったり流れるこの静かな時間を大変気に入っていました。
時折人形は窓ガラスにぼんやりと映る自分の顔を見て
微笑んではいるものの生気がなくて不気味だと気にしていたりもするようです。

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ランドセルには虚構の教科書

とある民家のりんごの色が一夜にして全て紫色に変わったというニュースを目にした人の抱いた感想は、
その数秒後に飛び込んでくる骨の無い新種の魚が発見されたというニュースによってかき消された。
さらに直後の殺人事件のニュースによって前の二つの印象は無となり、その後も続々とニュースは飛び込んできて同じような光景が繰り返される。
思考する時間などは許されていない。

用意された家畜用の商品。
用意さえた家畜用の薬。
用意された家畜用のお金。
用意された家畜用の世界観。
用意された家畜用の思想。
用意された家畜用の善悪。
用意された家畜用の価値観。
用意された家畜用の幸福。
用意された家畜用の解釈。
用意された家畜用の言葉。
用意された家畜用の感情。
用意さえた家畜用の意味。
用意さえた家畜用の未来。
用意された家畜用の牢獄。
用意されていない家畜用の出口。

goooooood bye。。。。。

半睡眠花

僕の頭痛と眩暈も他所に周囲には大ボリュームの喜怒哀楽が飛び交い続けていた。
俯いた視野の砂粒の中には小さな金色や銀色が見える、
普段は綺麗に見えるそれらさえ苛立たしいものに見えてしまう。
そんなことならいっそのこと周囲から意識を断ってしまおう。
そう思った瞬間から空は暗い雲に覆われ、意識は薄れていった。
薄い意識に花が咲く。
ぼんやり光る、青紫色の不思議な花だった。
突如花はカザグルマのように首を回転させながら微笑み始めたが、僕は笑わずにただじっと、目を回されていた。

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sanpo

目に見えない極薄のカラフルなクッキーを一枚
ビルのネオンに混じってなる甘い梨の匂い

目に見えない極薄のカラフルなクッキーを一枚
古いオルゴールの中にのみ咲く紫色の花の匂い

目に見えない極薄のカラフルなクッキーを一枚
未来の街に吹く潮風の匂い

音は追記へ

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